米長期金利急騰で波乱の3月相場到来か? 外為オンライン佐藤正和氏

コロナ禍の中でワクチン接種が着々と進んでおり、「コロナ後」を見据えた動きともいわれるが、3月相場は波乱に富んだ展開が予想される。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に3月の為替相場の行方をうかがった。

 米国長期国債の金利が急激に上昇して、一時期1.61%まで上昇した。ドル円も久しぶりの1ドル=106円台を記録。その一方で株式市場は史上最高値を更新し続けていた米国市場が、ハイテク企業などが揃うナスダックを中心に大きく下げた。翌日の日経平均株価も1200円を超える下げを見せた。コロナ禍の中でワクチン接種が着々と進んでおり、「コロナ後」を見据えた動きともいわれるが、3月相場は波乱に富んだ展開が予想される。外為オンラインアナリストの佐藤正和さん(写真)に3月の為替相場の行方をうかがった。

 ――米長期金利が急に上昇しましたが、背景には何があるのでしょうか?

 米民主党政権が打ち出している1.9兆ドル(約200兆円)の大型経済対策が米国議会下院を通過し実行に移される可能性が高まって来ました。さらに、この1.9兆円とは別に、バイデン政権は大掛かりなインフラ整備などの財政出動を準備しており、今後は米国国債が大量に発行されるのではないか、と言う懸念が出ています。

 大型の経済政策はまだ上院が残っているものの、3月中旬には成立する見通しといわれていますが、今回の1.9兆ドルの経済対策は名目GDPの9%にも相当し、景気が過熱するのではないかというリスクが指摘されています。とりわけ、米国国債が大量に発行されれば、債券の金利は上昇傾向となり、ドルが買われて株価が大きく下がることになります。

 もうひとつには、ワクチン接種が始まって「コロナ後」の世界が見えつつあることです。ワクチン接種が行き届けば、将来的に景気が一気に回復して「ゼロ金利政策」が解除され、現在の「カネ余り」現象が解消に向かうのではないか、という連想が働いてききます。

 これらの要因が金融マーケット全体に働いて、米国の長期国債は一時期1.61%まで上昇し、ドル円相場も昨年9月以来の1ドル=106円69銭まで、ドルが買われました。さらに株価はこのところ急騰していたナスダック市場を中心に大きな下げを記録するなど、にわかに調整局面に突入することになりました。

 ――為替相場では久しぶりに大きな動きとなりましたが・・・?

 今回の長期金利上昇時の為替市場で特徴的だったのは、通常は米国の金利が上がると金利差が拡大して「ドル高」となります。実際にドルは買われて「ドル高円安」となりました。ところが、今回は円に対してドルは高かったものの、それ以外の通貨ではドルは売られました。たとえば、ユーロドルは「ドル安ユーロ高」に振れ、豪ドル米ドルに対しても「米ドル安豪ドル高」となりました。やはり、米国債に対する将来的な見通しが懸念されているのかもしれません。

 円がドルに対しても売られたことは意外でしたが、その結果米ドル以外の通貨に対しても円は売り込まれ、ユーロ円は2018年11月以来の「1ユーロ=130円」に迫る水準まで上昇し、豪ドル円も2018年11月以来の「1豪ドル=85円」に接近しました。いずれも2年以上前の水準であり「円全面安」の展開といっていいでしょう。

 円が売られた背景には、やはり他の国に比べてコロナに対する対応が遅れていることが大きな原因と考えられます。他の先進国に比べてワクチン接種が遅れており、景気回復が遅れることが予想される現段階では、円は売られやすかったと考えられます。

 ――3月相場はどんな展開になるのでしょうか?
 
 問題は、米国の長期金利がどこまで上昇するかだと思いますが、1.6%を超えたのは短期的には行き過ぎではないかと思います。今後、大量の米国債発行を計画している米国政府にとって、金利上昇は金利負担の増大に直結するため、仮に0.1%金利が上昇しただけで年間20億ドル(約2100億円)の金利負担増になります。

 このまま金利上昇が続けば、米国政府の財政状況は悪化し続けることになり、米国債の格下げにもつながりかねません。金利上昇に対しては、米国政府やFRBも本気で対抗策を打ち出してくるものと考えられます。とは言え、長期金利上昇に端を発した株安は、ハイテク産業などを中心に今後も影響を受けるかもしれません。恐怖指数ともいわれる「VIX指数」も節目の30を超えて来ており、3月は為替、債券、株式の3市場ともに乱高下しやすい相場になる可能性があります。

 ただ、一時的なドル高円安はあるかもしれませんが3月全体を通して見た場合、やはり最終的には円が買われて来るのではないかと考えられます。ワクチン接種が進んでいる欧州、感染者数の増加を抑えられているオーストラリアなど、日本よりも景気回復が早いかもしれませんが、一方的に円が売られるような展開には向かわないのではないかと思います。

 ――3月の各通貨の予想レンジは?

 世界的には、3月は脱コロナの道筋が見えてくる重要な月になる可能性があります。ワクチン接種率の上昇に伴って、感染者数が減少してくる可能性があります。そういう意味では、米雇用統計の発表やFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして日本でも日本銀行の金融政策決定会合が行われますが、そうした為替市場にとって重視される通常のイベント以上に、コロナワクチン接種の進捗状況のニュースが重視され、相場は大きく振り回されるかもしれません。

 とりわけ、2月末に第3のワクチンと言われる米製薬大手の「ジョンソン・エンド・ジョンソン」のワクチンが正式に緊急使用が承認されたことで、一気にワクチン接種の状況が進展する可能性もあります。同社のワクチンは、1回の接種で完了といわれ、さらに冷凍ではなく冷蔵保管が可能といわれています。こうしたワクチン接種の状況を考慮に入れて、相場全体の動きを見る必要があると思います。

●ドル円・・1ドル=105円-107円
●ユーロ円・・1ユーロ=125円-130円
●ユーロドル・・1ユーロ=1.19ドル-1.23ドル
●英国ポンド円・・1ポンド=145円-150円
●豪ドル円・・1豪ドル=82円-85円

 ――3月相場で注意する点を教えてください。

 ドルが売られ、同時に円も全面安の展開になるか・・・、それとも市場が落ち着いてこれまでのような相場展開になるのか・・・。どちらに動くにせよ、3月は変動幅が大きい荒れる展開になると考えられます。また、為替市場以外でもこれまで青天井に買われてきたハイテク関連の米国株などは、今後も大きな影響を受ける可能性があります。

 金利の上昇や株式市場の下落のスピードによっては、想定を超える相場の動きがあるかもしれません。きちんとポジション管理をしながら、今後の感染状況の動きに対応していく必要があるでしょう。

 さらに、原油価格の上昇やビットコインといった暗号資産などの動向も金融市場全体に影響をもたらすかもしれません。とりわけ、原油価格が急激に上昇するような状況になると、エネルギーを輸入に依存する日本経済にとっては大きな負担となり、貿易統計なども影響を受けるため、円相場の動向にも左右します。きちんとニュースを確認しながら、小まめな利益確定を心がけましょう。(文責:モーニングスター編集部)。

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