秋田ノーザンハピネッツが挑む、「応援したい!」と思われる県民球団への道。

 B.LEAGUE 2020-21シーズン東地区で、B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21の出場権争いを繰り広げる秋田ノーザンハピネッツ。コロナ禍の影響もあり観客動員数を制限しての対応が迫られるなど、例年とは異なる運営を求められている。入場料収入の減少が見込まれる中で、クラブの運営にはスポンサーからの支援が不可欠だ。

 そんな中、この機会をやりがいとして捉え、クラブの成長の為に前を向く秋田ノーザンハピネッツ。今回はスポンサーとの関わりについて、取締役営業企画部部長の岩谷学氏(以下、岩谷氏)に話を伺った。

「応援して良かった、こんな感情をくれた、そんなシーズンにしよう」

秋田ノーザンハピネッツ会場3
(秋田ノーザンハピネッツの試合会場)

 「やりがいがありますし、腕の見せ所だと思っています」この日の取材も、岩谷氏からは終始前向きな言葉が聞かれた。一部の業種を除いて売上が減少する企業も多い中で、秋田ノーザンハピネッツもその影響を受けている。

 そんな中、支えとなるのはスポンサーの存在になるが、秋田ノーザンハピネッツは応援してくれる企業をスポンサーと呼ばず”パートナー企業“と呼んでいる。共に価値を創っているパートナーであるからだ。

 そこで、コロナ禍のパートナー企業との関係を岩谷氏に伺うと、「お休みされる企業様もありましたし、逆にパートナー料を増やして頂いた企業様もありました。また、減額してもやめはしないよ、応援したいから今までのような金額は難しいけど…などと言ってご継続くださる企業様もいらっしゃいましたね」と話してくれた。

 また、当時のパートナー企業とのやりとりで印象に残っている事として、岩谷氏は語った。「応援したいけど、状況が状況だから…という企業がいらっしゃることや、こういう時こそ応援しなきゃダメだと言ってくれる社長がいること。有難くて何も言えないですし、そういう方がいらっしゃることに感謝しています。」

秋田ノーザンハピネッツスポンサー2
(コロナ禍においても契約を継続するパートナー企業)

 企業によってはクラブ設立当初から付き合いがある会社もある。厳しい状況だから今年は契約できないけど応援していると言ってくれる企業。前年よりも金額が減少しても契約を続けてくれる企業。今だからこそ応援するよと言ってくれる企業など、クラブに愛情を持った沢山の企業に支えられているという岩谷氏の話を聞いて胸が熱くなった。

 クラブ立ち上げ当時から支えてきてくれたパートナー企業が、コロナ禍においても支援を続けてくれている。そのことに対して岩谷氏からはパートナー企業への感謝の言葉が続いたが、それだけでは終わらない。

 岩谷氏はこうも話してくれた。「シーズンオフの間は会社の中で共有した想いがありました。仮に収まった時に、あの時秋田ノーザンハピネッツにお世話になった、応援して良かった、こんな感情をくれた、そんなシーズンにしようという話をしました。そういう人たちに恩返しできるようなことをやりたいと思っています。」

クラブとして提供できる価値

秋田ノーザンハピネッツの試合中の選手の様子
(期待に応えるべく勝利を目指す選手とスタッフ)

 安心・安全を意識して運営することはもちろん、パートナー企業への価値提供という点でも最善を尽くした。新型コロナウイルス対策として、会場への収容人数は当然ながら減少している。今までは2人に伝えられていたことが1人にしか伝えられなくなる。パートナー企業としてもその点は痛手だ。

 クラブとして、どうしたらパートナー企業に価値を提供できるかを必死に考えた。具体的には、試合が開催された場合、収容人数が少ない場合、開催されなかった場合など、あらゆる場面を想定してプランを準備した。

 また、会場での露出が減る分、秋田ノーザンハピネッツの公式Twitterアカウントでの発信をプランにいれるなどの対応を行った。公式アカウントのフォロワー数は約8万人(2021年2月現在)と、秋田県内の企業アカウントの中でも1,2を争うフォロワー数となっている。ファンのSNSの捉え方にも年々変化があり、以前は知人との繋がりが多かったが、近年では情報収集を目的に利用しているファンも多い。

 公式アカウントのフォロワーの中には、試合会場に足を運ぶことはできないが、毎日公式アカウントから発信される情報を楽しみにしている人も多い。会場に足を運べない人が多いこともあり、試合で良いプレーを取り上げた投稿はファンからの反応が良い。

 その他にも、2021年2月17日の伊藤駿選手の誕生日を紹介する投稿など、試合以外で選手の様子がわかるような内容も、通常の投稿より反応が良く、ファンが公式アカウントからの投稿を楽しんでいる様子が伺える。ファンへのアプローチという点では、パートナー企業にとっても魅力的な施策であるはずだ。

 秋田ノーザンハピネッツの活動は当然ながら、試合運営を行うことだけではない。選手・スタッフによる秋田県の横手市で除雪ボランティアや、幼稚園や小学校への訪問活動も大事な活動のひとつである。

 コロナ禍において、幼稚園や小学校では、以前実施できたイベントが中止や延期になったりしている。岩谷氏によると、こういったコロナによる変化や空気感を、子供は大人以上に敏感に感じ取る傾向があるそうだ。

 でも、秋田ノーザンハピネッツの選手やスタッフが訪問することで、子供たちは目を輝かせて喜び、その子供たちの様子を見て喜ぶ親の姿も見ることができたそう。当時のエピソードを思い出しながら岩谷氏は嬉しそうに語ってくれた。

 「秋田ノーザンハピネッツが提供するのはバスケットボールの試合だけではありません。あくまでバスケットボールは一つのツールであり、地域の人を笑顔にすることであり、地域を活性化させることだと考えています。そうやって今後も地域の人を笑顔にできるようにしたいですね。」

秋田ノーザンハピネッツ学校支援
(小学校に訪問する秋田ノーザンハピネッツ株式会社所属 ラート競技世界チャンピオン髙橋靖彦選手)

 秋田ノーザンハピネッツのホームゲームは、毎試合熱い声援が会場全体に響き渡る。岩谷氏は、「入場者数の制限をかけるまでの秋田の会場は日本一、一体感のある会場だと自負しています」と語ってくれた。

 その会場が現在は収容人数を制限していることもあり、どうやって会場の一体感を作るかはパートナー企業ともいろいろ相談しながら進めている。もちろん、ここも岩谷氏、そしてクラブの腕の見せ所だ。岩谷氏はこの状況においても会場へ足を運んでくれるファンの方に感謝している旨を語ってくれたが、強い口調でこうも話してくれた。「日本一、一体感のあるクラブのファンを、”日本一のクラブのファン”にしたいです。」

応援して下さいではなく、応援しなきゃダメだと思う存在へ

秋田ノーザンハピネッツ試合風景
(シュートをうつ長谷川暢選手)

 2026年以降、Bリーグはエクスパンション型リーグへの移行を進めていく事が発表されている。単年での競技成績による昇降格も見直される見通しだ。新リーグへの移行にあたりクラブライセンスも基準が変わる。

 秋田ノーザンハピネッツも新リーグをB1で戦い、日本のバスケットボールの最高峰の戦いを秋田でも見られるようにするために、売上高12億円以上などの参入条件をクリアする必要がある。そして、その成長にパートナー企業からの支援は必要不可欠だ。

コートに向かう野本建吾選手
(コートに向かう野本建吾選手)

 今後、パートナー企業とどんな関係性を築いていきたいかという質問に対して岩谷氏は、「応援して下さいではなく、応援しなきゃダメだと思う存在になりたい」と話してくれた。この言葉には、コロナ禍において頑張っているクラブを「俺が、私が設立当初から支えてきたからこそ今後も応援しないといけない」と思ってもらう、そんな意味も含まれているだろう。

 ただ、それだけではなく、「秋田を更に活性化させる」「秋田ノーザンハピネッツは正しいことをやっている」「正しいことをやっているのだから応援しなくてはいけない」そう思ってもらえるような活動をしていくという意味もあるようだ。

 応援しなきゃダメだと思う存在として捉えてほしいのは、パートナー企業だけではなくファンも一緒だ。岩谷氏は例え話としてこう話してくれた。「試合会場にもよく来てくれるファンのご夫婦がいるとします。例えば、ボーナスが少なくなってしまった時でも、秋田ノーザンハピネッツは応援したいから、そこの支出はしょうがないよね。そう思ってもらえる存在を目指したいです」

 このエピソードから見える未来は、秋田ノーザンハピネッツが生活に根付いており、秋田県民にとって必要不可欠な存在となっている未来だろう。

秋田ノーザンハピネッツ会場2
(試合会場で声援を送る様子)

 秋田ノーザンハピネッツは、活動理念として『秋田ノーザンハピネッツ県民球団宣言』を掲げている。秋田のかけがえのない存在になることを目指すという主旨である。

 すでにパートナー企業からの温かい言葉と支援を受けている秋田ノーザンハピネッツ。コロナ禍において、幼稚園や小学校への支援活動の他にも、除雪ボランティアなども行い、地域の人たちを笑顔にする活動や生活支援にも取り組む。

 Twitterの公式アカウントのフォロワー数などを見ても、秋田ノーザンハピネッツが秋田県民の生活に根付いてきていると感じる。それでも県民球団は歩みを止めることはしない。

 さらなる成長を続け、秋田のために新リーグのトップカテゴリーに、秋田ノーザンハピネッツを参入させること。応援しなくてはいけないと思われる存在になること。そして、秋田のかけがえのない存在になるべく、今日もまたやりがいのある仕事に取り組んでいる。(取材 / 文:長島啓太)

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