未来へトス!バレーボールに込めた夢 ~兵庫デルフィーノの挑戦~

みんなでワクワクするような夢を

「デルフィーノを通じて、ワクワクするような夢をたくさん見せたい。
プレーをする選手に憧れたり、試合の勝敗をみんなで手に汗握りながら応援したり、地域の皆さんと一緒に作り上げていくような、そんなバレーボールチームになりたいと思っています」
兵庫デルフィーノバレーボールチーム代表 岩本正吾(いわもと しょうご)さんは熱意を込めて語る。

兵庫デルフィーノが誕生したのは2006年。
2007年にNPO法人阪神バレーボールコミュニティが運営母体となり、2012年にチーム名を現在の「兵庫デルフィーノ」に改称した。
本拠地を兵庫県尼崎市に構え、今シーズンはV.LEAGUE DIVISION2(V2リーグ)に所属している。
狭山デルフィーノ(大阪府狭山市)と阪神デルフィーノ(兵庫県尼崎市)という2つのジュニアチームを持ち、子どもたちの選手育成にも熱意を注ぎ込んでいる。

Vリーグには、さまざまな運営母体のチームが加盟しているという特徴がある。
兵庫デルフィーノのようなNPO法人が運営しているチームや企業所属チーム等があり、各チームの背景は多様だ。
兵庫デルフィーノでは大半の選手たちが平日昼間は別の仕事をしており、夜間に練習に参加。シーズンに入れば、週末の試合日程に応じて全国各地へ遠征に出かける。

▲遠征時の練習の様子

ホームとは言え、兵庫デルフィーノのサブホームタウンとなっている兵庫県内の西脇市と南あわじ市の体育館は直線距離で約70km離れている。
遠征や開催の準備のための移動がかなり大変になるが、県内各地で開催することにより「ファンと身近な距離を保ちたい」「バレーボールを通じて地元に貢献したい」というチームの思いも込められている。

2020年、兵庫デルフィーノのファンクラブ「D⇄Train」のホームページを刷新。
「ファンになってくれている人により使いやすく、ファンであることを楽しんで欲しい」という思いからホームページの管理システムを新たに作り、導入した。
「初めてのことも多かったのでなかなか大変でしたが、制作会社の方と何度も打合せをしながらシステムを作りました(事務局井上氏)」。

ホームページの刷新以降、会員数は順調に増加中。興味深いのは、会員数の約5割が兵庫県である一方、東京と北海道で約3割を占める点だ。
「ちゃんとした分析はできていませんが、関東や北海道には遠征に出かけることも多いので、そこで兵庫デルフィーノという存在を知ってもらえたのかな、と思います」

▲ログイン後のファンクラブサイト画面。情報を定期的に発信している

Vリーグ開催にも及んだコロナウィルスの影響

2020-21シーズンがスタートしたが、今季はV2リーグに所属する13チームのうち2チームがコロナウイルスの影響により活動を断念。リーグは11チームでのスタートとなった。
チームの出自がそれぞれ異なるだけに、チームとしての運営判断にもばらつきが出る。未曾有の事態を経験している各チームにおいて、活動を断念したチームにとっても苦渋の決断だったことは想像に難くない。

一方、リーグに参加した11チームも対戦の組み合わせが減り、試合数が減少するという影響が出た。
兵庫デルフィーノもホームでの試合が減り、さらに感染予防対策の観点から「観客動員数は定員の半数まで」という入場制限が定められた。感染者拡大を防ぐため、無観客試合になった会場もある。

観客数の減少は、そのままチームの収入減を意味する。

「今季はホームで開催予定だった2日間の日程がキャンセルになってしまいました。仕方ないとは言え、非常に悔しい気持ちです」
集客イベントの開催も難しく、今シーズンは深刻な収入減になる見込みだという。
さらに、兵庫デルフィーノの主な練習場所だった体育館の改修工事等により練習場所の確保に非常に苦慮した。「まさに二重苦・三重苦のような状況(岩本氏)」。

▲現在の練習の様子

こんな時こそ夢を!一部昇格を目指して

昨シーズンは12チーム中11位に終わった。厳しい状況だが、チームには「2025年に一部昇格」という明確な目標がある。
運営母体であるNPO法人を2021年に株式会社へ移行し、将来はプロチームになることを視野に入れている。

兵庫という土地でプロチームにこだわる背景には、バレーの一極集中ともいえる現状を変えたいという思いもある。
関西にもインターハイで上位入賞するバレーボールの強豪校はあるものの、より良い環境を求めて高校卒業後に関東へ進学する選手が少なくないという。

「ちょっと言い過ぎかもしれませんが、兵庫デルフィーノは『将来、関西でプロになりたい』というバレーボーラー達の夢も背負っているつもりです」
少しはにかみながら語る岩本氏。事務局にも兵庫県出身のバレーボーラーは多い。
「いつか地元に恩返しがしたい」と長年考えてきた思いを実行に移し、兵庫県で活動している。

兵庫デルフィーノでは、ジュニア選手の育成だけでなく、地域貢献活動の一環として選手たちが各地のイベントに参加したりバレーボール教室を開催したりするなど、地域ぐるみでバレーを愛する人たちを増やしていく活動を続けてきた。
これらの活動に全て共通しているのは「ワクワクする夢を見せたい」というチーム代表・岩本氏の理念だ。

地域に溶け込んだチームとして、兵庫デルフィーノに関わる人たちに「あの選手みたいになりたい」「一緒に応援したい」と夢や憧れを持ってもらえるようなチームでありたい、と岩本氏は語る。
兵庫デルフィーノがプロチームになれば、将来「プロ選手になりたい」というジュニアの夢を叶えることにも繋がっていく。

現役を引退し、今は事務局としてチームの成長を陰から支えている井上氏も、『ワクワクする夢』の形をこのように語っている。

「自分自身、選手としてバレーを続けてきた後に裏方の仕事をするようになり、本当にたくさんの人が裏側で支えてくれていたことを改めて知りました。
そんな人たちにもスポットライトが当たるような、選手もファンもスタッフもいろいろな立場でワクワクし続けられるような、そういうチームになりたいと思っています」

チーム初の外国人選手が加入

今季、チームはオーストラリア出身のマシュー・パロット選手と契約した。
兵庫デルフィーノにとって初の外国人選手であり、プロ選手としての契約もチーム創立以来初の試みとなる。
明るい話題を提供したいという思いと、リーグ昇格を目指すステップの一つとしてチームを強化したいという思いが「外国人選手とのプロ契約」という形で重なった。

「チームを支援してくれているスポンサーにも『何か起こるんじゃないか』というワクワク感を持ってもらえたのではないか、と思います」

かつて日本でバレーボールの試合やトレーニングに参加したことがあるというパロット選手。
日本式のトレーニングを何度も繰り返し、コーチからの優れた技術的アドバイスを通じて「自分自身のバレーボールのスキルを向上させるのに最適な環境だと思った(パロット選手)」。兵庫デルフィーノからのオファーを受け、日本でプレーすることを決断したという。

コロナウイルス対策により国内間の移動もままならない2020年9月、単身でオーストラリアから来日。2週間の隔離生活を経てチームに加わった。

「まだ来日して日が浅いのですが、本人も一生懸命日本語を学びながらチームに貢献してくれています」

2021年2月7日現在、パロット選手はV2リーグの個人総得点ランキングで4位にランクインし、活躍中。一方、チームの広報活動にも参加しており、193cmの身長は「とにかく目立ちます(笑)」。
ポスターを貼っているときに地元の人から声をかけられ、チームを知ってもらえるきっかけになったこともあるという。

パロット選手の目に、兵庫デルフィーノはどのように映っているのか。本人に聞いてみると、
「バレーボールに注ぐ情熱を強く感じるチーム。得点時の喜び方もクリエイティブで、ファンとして見た時も非常にエキサイティングだと思う」
チームの熱意は言語の壁を越えてしっかりと彼に伝わっているようだ。

▲今年新加入のパロット選手。今季の“顔”になっている

『WE NEVER DROP THE BALL』

Vリーグのコンセプトは、『WE NEVER DROP THE BALL』。
チーム全員で一つのボールを拾い、追いかけ、チャンスまで繋ぎ続けるスポーツだ。
3回のボールパスの間に攻守が目まぐるしく入れ替わり、戦術の巧拙と瞬間の判断が勝敗を分ける。
しかし、それだけに練習を積んで技を習得したときは格別の達成感がある、という。

満員の会場に響き渡るファンの声援に背中を押されながら、ブルーのユニフォームを着た兵庫デルフィーノの選手たちがコートに並び立つ。
想像するだけでワクワクするようなその日へ向かって、チームはボールを繋ぎ続ける。

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